東京大学大学院情報学環アーカイブ 第一次世界大戦期プロパガンダ・ポスター コレクション Homeサイトマップ
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プロジェクト説明――デジタル・アーカイブ化作業に関する報告
小泉 智佐子 (プロジェクトマネージャー)

東京大学大学院情報学環が所蔵する第一次世界大戦期のプロパガンダ・ポスター、全661 点についてのデジタル・アーカイブ化作業が終了した。5名ほどのスタッフが集まり作業を開始したのが2001年。ひとまずの完成までに5年の歳月を費やした。
作業は大学院生スタッフを中心におこなわれ、作業が進行する中でようやくコレクションの全体像が明らかとなり、それと同時に、多方面から様々な情報がもたらされるようになった。新たな情報をもとに作業方針を修正しつつ進めてきた結果、現在では、当初の計画よりも大きなプロジェクトへと拡大、発展を遂げている。今後も追跡調査、プロジェクトの展開等により、本デジタル・アーカイブは成長し続けていくものと考えられるが、ここでは、これまでの一連の作業を報告する。 本プロジェクトにおいておこなった作業内容とプロセスは、以下の通りである。

1. ポスターの保存・修復処置
ポスターの保存・修復修復は専門業者に依頼しており、ドライクリーニング(表面の汚れ落とし)のほか、古い裏打ちの除去(一部ポスターのみ)、欠損補填、和紙による裏打ち、脱酸性化処置などを施した。ポスター裏面には、外務省情報部の印と数種の手書き文字が残されているが、いつ誰によるものなのかは明らかではない。来歴調査の手掛かりとなることを考え、裏打ちが残されているものに限り記録をとった。

2. デジタル画像データの取り込み及び画像データ番号、ポスターの整理
本デジタル・アーカイブでは、ファイルメーカー社のデータベースソフト「FileMaker」を使用している。専門業者によってデジタル化されたポスター画像をデータベースに取り込み、デジタル・アーカイヴ用に管理番号を作成。平行して現物ポスターの整理をおこなっている。

3. データ項目の決定と入力作業
ポスターには図書資料のように決まった目録規則が存在しないため、独自に項目を決定する必要があった。本プロジェクトに関係する「戦争とメディア」研究会と「デザインと文化」研究会の分野をカバーできるよう、ポスターに印刷されているテキストの全文入力と翻訳(一部ポスターについては部分訳のみ)のほか、版式、色数、色名についての項目も含めている。色名については、表示デバイスによる色表現の違いも考慮した結果である。また、本コレクション以外に、情報学環が所蔵する他の歴史資料についてもデジタル・アーカイブ化が進められつつあり、いずれはデータベース間を横断検索できるようなシステムの構築が計画されている。そのため、第一次世界大戦期のプロパガンダ・ポスターの固有性に着目しつつも、他のデータベースとの関連性を考慮し、項目を決定する必要があった。

4. テキスト入力・翻訳
内容研究のためにもテキストデータと翻訳は必要であると考え、2004 年度から2005 年度にかけて国内外の大学院生に協力をあおいでテキスト入力とその翻訳をおこなっている。予算と時間の関係ですべてのテキストについての翻訳はおこなっておらず、また、翻訳用語の統一作業が課題として残っている。

5. 同定作業
ポスターのクライアントや制作者名、発行年等を文献や他機関が公開しているデータベースをもとに調査をおこない、データベースに反映させた。

6. 版式調査
2005 年3 月に調査チームが組まれ、ほぼ1年の歳月をかけておこなわれた。調査を依頼したのは、印刷研究や印刷業に携わってきた専門家の方々である。 まず、想定される印刷形式の分類項目を設定し、調査シートを作成。ポスターを制作国、クライアント別に分類したのち、1 点1 点について調査をおこなっている。調査結果は、スタッフが筆記によって記録。後にそれをデータベースに入力する方法をとった。調査過程における議論そのものも重要な記録資料となると考え、調査の様子をビデオで記録している。
調査結果の精度を上げるため再調査と調査者間での議論を重ね、一部のポスターについてはポリエステルフィルムの開封や裏打ちを除去しての調査もおこない、調査結果をデータベースに入力。2005 年冬からはデータの集約作業に入った。入力された全ての版式データを見通しながら、この時代の印刷形式を分類整理するための用語を決定。しかし、今回対象となった第一次世界大戦期のポスターは、印刷技術の転換期と重なるため基準軸の設定が極めて難しく、集約作業にも膨大な時間が費やされることとなった。集約作業後もさらに数回、調査を重ね、全調査を完了している。

7. 関連アーカイブ調査
2004 年度には、第一次世界大戦期のプロパガンダ・ポスターを所蔵する国内外の施設を訪問し、調査をおこなった。実際に資料整理、データ構築に携わった専門家たちと面会し、データ項目の立て方、使用ソフト、運営管理といったことのほか、資料の保存、公開状況、資料の来歴等についてもヒアリングと意見交換をおこなっている。国内施設では、本コレクションとの比較調査もおこなった。

報告は以上だが、全作業についてここで詳細に述べることができなかった。別の機会にあらためたい。また、これだけの時間を費やしてもなお、記載データには検討すべき課題が残されている。それでも我々が現時点での公開に踏み切るのは、当コレクションを少しでも早く、多くの方々に見ていただくことを優先させたかったからに他ならない。デザイン研究にとどまらず、様々な分野において広く研究に資することができれば幸いである。

Profile
小泉 智佐子 (Chisako Koizumi) 東京大学大学院情報学環 技術補佐員
立教大学大学院文学研究科比較文明学専攻博士課程前期課程修了。
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